<東京同窓会 編>

12月9日。

絶好の天候。

飛行機は快適でまったく揺れない。

東京も快晴で申し分なし。

とても浮き浮きさせる予感が辺りに漂っている。

きっと、楽しくなるぞぉ〜!!


威風堂々たる日本一の山が祝福している。



出光美術館で特別展を観た後にやって来たのは待ち合わせの場所。



“東京国際フォーラム”



もうちょっとしたら、何十年ぶりの再会が待っている・・・。

◇ ◇ ◇

「はい、チーズ!」



こうして同窓会が始まった。

◇ ◇ ◇

「初めまして、わたくしが森岡です」

こんな挨拶からだった。

「みんな元気だったか?」
「先生もお元気そうで何より」
「ワシはピンピンしとる。ちょっと歩くのが遅くなったけどな」

「神戸空港でカウンターの女性に“杖を準備しますか?”
 と聞かれて、“いらんワイ!”でしたからね、先生」
「いらん事はここで言うな」

初っ端はリラックスが必要なのである。

「本日の同窓会が開催できました事、先生の誕生日、
 並びに、皆さんのご健康に乾杯しましょう」

「かんぱい!」
「かんぱ〜い!!」

「和田さんがそろそろ到着すると思います」

そんな話をしていたら・・・。

「お待たせしました〜」
タイミングの良いご登場である。

「では再び、かんぱい!」
「かんぱ〜い!!」

「池山君も東京駅から歩いて来るそうです。もうじきに見えるでしょう」

最後のお一人が来る話をしていたら・・・。

「ご無沙汰しています」
「三度目のかんぱい!」
「かんぱ〜い!!」

◇ ◇ ◇

ここからしばらくは先生の独演会。



もちろん、恭しく拝聴しなければならない。



特にお初の人達は・・・。

◇ ◇ ◇

「東京での同窓会は三度目なんや」
「エッ? そんなに来られているのですか?」
「学校が違うんやけどな。でも今日は格別や」
「お店は石田君に頼みました」
「雰囲気が良くて、貸し切りみたいやな」

部屋には座敷テーブルが二つ。
もう一つは予約が入らなかったんだろう。
貸し切りだったのである。

「先生、昨日から興奮して寝られなかったんですよ」
「塩畑、そうやったんか」
「先生を探しに出光美術館に行ったんだけど、探しきれなかったんです」
「鑑賞する人が多かったもんなぁ」
「あれなら、とても少ないんですよ」
「・・・ホント?」

「そう言えば、塩畑さんが誰かに書いた卒業の交換ノートだったかな。
 文章が途中でブツッと切れてたのがあったよ。
“書くことが無くなった”とか言っててさ」

「エ〜! そんなことありましたか?」
「僕がその後に書いたから、ちゃんと憶えているよ」
「池山君はこういう事、憶えてるからなぁ・・・」

「そうそう、先日の同窓会だったかな」
「修学旅行の入浴時にみんなは隠してたのに、
 一人隠さずに堂々としてたって話も聞いたよ」
「エ〜!、憶えてないよ〜!!」
「そろそろ、出てきましたよ〜。むかし話」

面白いことなのだが。
同窓会では当時の自分が人の思い出話しで登場する。

自身は忘れていても。
当時の時間を共有した貴重な証拠なのだ。

これが同窓会の醍醐味の一つ。

こうして時代は一瞬にして当時に突き進んで行く。

◇ ◇ ◇

「八木さんは日本に戻ってきて慣れましたか?」
「やっぱり日本が住みやすいよ」
「私もロンドンに住んでたけど、日本が良いですよ」
「塩畑さんも赴任してたんや」
「石田君もイギリスやったよね?」
「片田舎の研究所だったんだけどね」
「なんか、みんな凄いねぇ・・・」

「そう言えば、梶君が卒業式の時に隣だったそうだよ」
「・・・憶えてないなぁ。。。」
「で、胸にリボンを付けるのが恥ずかしくて出来なかったそうだよ」
「今なら何人にでも、喜んで付けるのにねぇ・・・」
「ホンマ、ホンマ」

「青春真っ盛りに、先生もエライ注文したもんですわ」
「ワシは真面目に言うたんやけんどなぁ」
「まま、これも思い出の一頁ですな」
「そうや、そうや」

「ところで先生、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう、こんな誕生日も初めてやわ」
「お幾つになられたんですか?」
「満八十歳になったわ」
「矍鑠(かくしゃく)としてますね」
「次の目標は米寿なんや」
「まだまだ大丈夫ですよ!」

◇ ◇ ◇

「おっとグラスが空いたね、次は何にしますか?」
「私は熱燗にします」
「オッ、塩畑は熱燗がいけるのか?」
「私、強いですよぉ〜〜」
「じゃぁ、ワシも熱燗や」
「石田君は?」
「僕も熱燗にします」
「池山君は?」
「同じく」
「八木さんは?」
「私はビール」
「和田さんは?」
「梅酒ソーダ(だったかな?)」
「私も徹夜明けなんで、まだビール」

「この前の同窓会で尾上は酩酊してたけど家に帰れたのか?」
「おそらく」
「何かへろへろやったし、心配したんだけど」
「あんなん普通よ」
「危なっかしいな」
「それでも家にはどうにかこうにか到着してますわ」
「ふぅぅぅん」

◇ ◇ ◇

呑むほどに打ち解け、酔うほどに盛り上がってくる。



先生の話しも止まらない。



「ワシは思うんやけんど、人と人の繋がりは大切なんや!」

そろそろ、十八番(おはこ)が出てきたぞぉ〜。

◇ ◇ ◇

まだまだ話題は続く。

「山田君が浜松市に赴任してて、次回の同窓会は浜松市でやろうと言ってたよ」
「浜松市ってウナギ三昧で同窓会になるのか?」
「山田君の懐具合によると思います」
「来年は三島さんがシドニーから帰国するそうやで。そん時が同窓会になりそうだわ」
「オーストラリアかぁ・・・」
「そう、イギリス的な生活をしてるってメールが届いてた」
「何だか優雅やなぁ・・・」

「HPを見せてもらったけど、みんな変わってないね」
「中身もほとんど一緒だよ」
「八木さんも塩畑さんも変わってないやん」
「先生だけが当時の厳格な態度が無くなってるけど・・・」
「あんときはワシは教師やったからな」
「こんなに砕けてたとは想像してませんでした」
「今も当時と一緒なら、居づらくて仕方ないって」
「そりゃ、そうだわね」

「カキコによく書いてる人は誰?」
「○○くん、ちょっと有名人」
「そうなんだぁ。。。」

「福岡さん、野武さん、柳さん、甲斐さん、ここに同席したかったみたいよ」
「懐かしいぃ・・・」
「おそらく明日以降から、HPのアクセス率が増えるで」
「そうなの?」
「以外と見てるようだし」
「そうなんだぁ」

「熱燗がなくなったね、すみませ〜ん!」
「は〜い」
「熱燗の二合、二本追加ね」
「は〜い!」

◇ ◇ ◇

「東京はお高いイメージがあるけど、この近所には立ち飲み屋もあるんだよ」
「え?ホンマに?」
「あるある。次回はそんな場所に行くか?」
「お願いしますわ」

「級友の大半は分かってるんだけど、まだ若干分からない人がいるんだわ」
「何人くらい?」
「4〜5人」
「また分かったら情報教えてね?」
「分かった」

「先生見て下さい、うちの子供の写真です」
「オッ、どれどれ」
「僕も携帯の待ち受けにしてる」
「私も娘を携帯に撮ってる」
「どれどれ、見せてみろ」

「ありゃ、もう熱燗がないや」
「すみませ〜ん、熱燗二本!」
「は〜い!」

「同窓会を始めて十年以上経つけど、一回目が一番多かったわ」
「どれくらい集まったの?」
「二十人くらいかな」
「それからは?」
「目減りする一方で、回復の兆しなし!」
「あはははは・・・」

「ただ最近は少人数で集まる方が楽しいねん」
「何で?」
「一人一人との会話時間が長いから」
「ふぅぅぅん」
「毎度、同窓会だけでは時間が足りないから」

こんな会話がなされて程なく。

「そろそろ、お時間なんですが〜?」
「エッ?もうそんな時間??」
「そう、経ってるんだわ」

「先生、お手洗いは?」
「おぅ、行っとこうか」

先生がもどって来て、席に着くや。

♪ハッピ バースデェ〜 テゥ〜 ユ〜♪
♪ハッピ バースデェ〜 テゥ〜 ユ〜♪

「ありがとう、ありがとう!」

「ほんじゃ女性陣、記念写真を撮るよ!」



「みんなで記念写真を撮るよ。ささ、並んで並んで!」



「また大阪にも出て来いよ、ほんで会おうや!」

◇ ◇ ◇

国際フォーラムで別れたんだけど。
先生はいたくご満悦で。

「良かった、良かった」
の連発。

帰りの飛行機内では心底満足でグッスリと熟眠。

◇ ◇ ◇

神戸に到着し、三宮で先生と別れた。

「また電話してこいよ!」
「日の高いうちからミュンヘンで一杯やりましょう!」
「よっしゃ、ほな行くぞ!」
「さよなら〜、気を付けて」
「おぅ!」

◇ ◇ ◇

ご出席のみなさま、お疲れ様でございました。



<ちょっと集合 編>

「久しぶりに集まりましょか?」
「いいっすねぇ。。。」
「何人かに声をかけてみます」
「よろしく」

10月20日、ちょっと肌寒いこの日。
安田君の店のカウンターに並んだ。

「お久しゅう」
「お元気だった?」
「大丈夫だよん」
「ほんじゃ、乾杯!!」

「チーッス!!」

「今日は控えめでやりますわ」
「何で?」
「明日も昼から飲み会なんだわ」
「飲んだらエエやん」
「松田タクシーも居てるし・・・」
「そうやねぇ。。。」

思いっきり飲んでしまう・・・。

「東京に行ってみますか?」
「東京組と合流?」
「先生もお歳なんで無茶も出来ないけで、それでも一回ぐらいは行きたいし・・・」
「連絡したら集まるかなぁ?」
「何人かは来てくれると思うんだけど・・・」

計画案が現実味を帯びてくる予感プンプン。

「清っさんが遅れるけど参加するって」
「先生も出張中だけど遅くなら参加するって」
「何時頃?」
「10時過ぎ」
「・・・おらんって」

「そう言えば良の息子さんは大学合格やね、おめでとう!」
「ありがとう」
「実はうちの息子も高校合格してん」
「ほぉ、それはおめでとう!」
「高校、大学一貫やから大変なんよ」
「そりゃそうやねぇ・・・」

「人肌恋しい季節になりましたが、どうなん?」
「どうなんって、何が?」
「賭けしようか?一年後に結婚してるかどうかの」
「僕、してない方に賭けるけどエエ?」
「そりゃ賭けにならへんよ」

「大阪のショップは慣れた?」
「ずっと立ち仕事だから大変」
「休みはシフト制?」
「そう、だから先に連絡もらわないと動けないのよ」
「了解そうするわ」

「これ、美味しいね」
「誰が味付けやってると思ってんの?」
「奥さんでしょ?」
「ようそんなこと言うわ」
「アハハハハ・・・・」

今は多忙で出席出来ない人も。
近い将来には参加してくれることを思いつつ。

細々とでも続けられそうな。
秋の夜長の楽しい会話なのでありました。


甲子園はただ今立ち入り禁止。工事中でありました。



どうやら私が撮ったんだけど・・・



いつものメンバーでございました。


<07年同窓会 編>


     「ささ、笑って、笑って」





     3月21日。
     神戸ミュンヘンで今年の同窓会を開催した。
     先生とは七ヶ月ぶりの再会である。

     と言っても。
     1月13日にもこの店に足を運んだ。
     札幌からの珍客と合流したからだ。

     少し遅れて店を訪れると・・・。
     やってる、やってる。

     「どうもすみません、遅れました!」





     シーーン。

     先生が一生懸命に話されているのを皆が拝聴しておられるご様子。
     しかも。
     置かれたままのビールの泡が消えている。

     「ささ、先生、乾杯!乾杯!!」





     「おぉ、おぉ、そうやな。かんぱ〜い!!」
     「乾杯!乾杯!!」

     ゴクリ。
     ひとくち、ふたくちビールを飲んでしまうと、先ほどの続きが始まった。

     「格好悪い話しなんやが、一昨日に飲み過ぎて携帯を落としてしもたんや」
     「先生、ちょっとは自重せんとあきませんやんか」
     「しかも、昨日は二日酔いで終日ダウンや」

     人の話しは聞いておられないご様子。

     「今日はビールだけや。酒も焼酎もやらんからな」
     「ホンマですかぁ???」
     「今日はホンマもんにビールだけや。浮気はせん!」

     矍鑠(かくしゃく)としたもんである。





     今回はいつもお世話になっている安田君が出席。
     お店が休日なので、初めて外に出てきてもらった。

     聞いてみると、三ノ宮の繁華街に足を向けるのは10年ぶりとのこと。
     「すっかり変わってしまってるなぁ。。。」
     ちょっと感慨深げ。

     今日は彼の中学時代の話題を提供してもらえることを確信しつつ。
     ゆったりと飲んでもらうことにした。





     和田先生&マジシャン尾崎君も常連のメンツ。
     尾崎君は晩にマジックショーがあるとのことで、衣装ステージでご登場だった。

     「大阪に三田に神戸にと、マジックに講師に飲み助にと方々出歩いてるよ!」
     「相変わらず元気に動いてるねぇ」
     とは、先生。

     「私は来週、学校の期の打ち上げでここを予約したのよ」
     「そうか、ほんならワシからも口を利いといてやるわ」
     とは、これも先生。

     「先生、一度東京で同窓会してみませんか?東京組の人に声をかけてみますよ!」
     「お、そうか。それもエエな。ワシは行くで!」
     「先生、僕もお供しますよ!」
     これは加賀見君。

     「東京組のメンバーも元気にしとるんか?」
     「先日、何人かに電話しましたら、元気そうにしてましたよ!」
     「ワシも元気なうちでないと行けんからのぉ。。。」
     「先生はお元気ですからまだまだ大丈夫ですよ!」
     「そうやな、実は明日もここで飲み会なんや」

     ・・・

     今年傘寿(80歳)とは思えない活発さに一道唖然とするのであった。





     今回は甲斐女史も先生と差しつ差されつの晩酌は控えめ。

     「今日はおとなしいけど、一体どったの?」
     「医者から控えるようにカードを出されたの」
     「ほんじゃ、寂しいかぎりやねぇ」
     「まぁね、仕方ないわよ」

     「そう言えばこの前、俺の頭をバンバン叩いてたよな」
     「エッ?そうやった?」
     「俺、何でこんなに叩かれなアカンのか分からんかったわ」
     「気のせいと違うの」
     涼しい顔で女史はおっしゃる。





     「周りの仲間の近況はどうなってるか知っとるか?」
     「梶君は来期も札幌勤務が決定しましたよ」
     「ほう、そうか」
     「八木さんと福島さんは習志野でご近所ですわ」
     「ほう、ほう」
     「原田君は気にしてるられんだけど、なかなか仕事との都合が付かないようです」
     「ふ〜ん」

     「榎本君は分からなくなりました」
     「そうかぁ・・・」
     「村瀬さんは見かけますよ」
     「そうか、そうか」
     「宮脇さんも見るよ、また声をかけてみるわ」
     「頼むど」
     「大良君は仕事は都合が付いたんですが、ご家族の都合が付かずに欠席です」
     「なるほどな」
     「湯川君は風邪」
     「大丈夫なんか?」





     「塩畑さんはお元気ですよ。先日電話で話しました」
     「石田君は連絡がすぐ付きますし」
     「池山君も出来ますよ」

     「まだ探しきれない人が何人かいますけどね」
     「まま、それも仕方ないことやわ」

     「友達は大切にしとけよ!後々によく分かってくるぞ!ワシはホンマにそう思っとるんや」
     「は〜い」
     「月に一度はきっと同級生の友人と会うんやけど、それはエエもんやからな」
     「やっぱり、そうでしょうね」
     「歳を重ねれば重ねるほど実感するぞ!」





     「そんじゃ、ワシはそろそろ帰ることにする」
     「先生、何かあるんですか?」
     「七時から来客があるんでな」
     「そうですか、じゃぁ次回決まればご連絡申し上げます」
     「おう、楽しみに待ってるからな!」

     さすがに二日酔いが醒めきってないのか、ビールだけでお帰りになられた。

     それでも。
     先生が帰られても、宴はまだまだ続く。

     「まだまだ先生はお元気だわ」
     「これからは会えるときにお会いせんとね」
     「ホンマ、ホンマ」

     「先生と俺のオヤジは歳が一緒やから、オヤジみたいな感じがするわ」
     「そうかぁ」
     「しかも。オヤジは海軍やったけど、先生も海軍に行きたかったと聞くと縁を感じるなぁ」
     「安田君、ちょっと感じが違うでしょ?」
     「学校では厳格やったけど、一歩外に出ると違う一面があったんやな」
     「僕らは何遍も聞いてるけど、安田君はお初やからなぁ」

     「今になって思うんだけど、毎年クラスの子から年会費をずっと貯めておいたらなぁと思うわ」
     「何で?」
     「もう十年が近くなるでしょ?年間一万でも、もう一人頭十万円になるよね。豪勢な同窓会が出来るよ」
     「そうかぁ・・・」
     「例えば、名古屋か浜松あたりで東京組と合流して、
      そこで昼の宴会なんて出来るでしょ。旅費も全て賄えるからね」

     「私、昔に提案のあった五百円貯金してるよ」
     「エッ!そうなの!!」
     「うん」
     「さすが、先生が太鼓判押す柳さんやわ」
     「今の話し、かんなり驚かせてもらった」

     「そんだけ集まったら東南アジアツアー出来るで!」
     「清っさん、ちょっと難しいんと違ゃうか」
     「まぁ、そんなんも出来るっちゅう話しやけどね」

     「また機会を見て、年会費の提案をしてみるわ」
     「面白い話しやわな」
     「まま、この同窓会が続くとしての前提だけどね」





     「じゃ、そろそろマジックショーがあるんで、悪いけど退座しますわ」
     「帰る前に1つか2つ、マジックを見せてよ」
     「ん、なら簡単なのをお見せしますわ」

     パチパチパチパチ・・・・・。

     種も仕掛けもある箱をゴソゴソし、トランプを出してきた。

     「今からのマジックはうちの娘がやってるやつだから」
     「娘さんはいくつ?」
     「5歳」

     ・・・なめられたもんである。

     しか〜し。
     さすがマジック。
     タネも仕掛けも分からず、しっかり魅了されてしまうのであった。

     パチパチパチパチ・・・・・。

     「それじゃ、お疲れさん!」
     「お疲れさん!!」

     マジシャン尾崎君が帰っても話しは尽きない。

     「パリの生活は楽しかったで!」
     「私もまたパリに行きたいのよ」
     「行けるうちに行っとかな!もう俺は飛行機に15時間も乗るのはアカンけど」

     話題は次から次へ。
     ここには書き切れるはずも無いくらい、当時の同級生がご登場してくる。
     恋愛に、勉強に、激励の手紙に、進学に、その他、その他。

     しかし、今回もタイムオーバー。
     気が付けばミュンヘンで6時間近くも居座ってしまっている。
     ササッと帰り仕度を整え、休眠中の清っさんを起こす。

     外の気温はそれまでの差すような冷たさは影を潜めていた。
     「今日はマシやなぁ、、、」
     帰る方向の違う柳さんとは途中で別れ、残りはぞろぞろと阪神に向かう。

     宴の後の一抹の寂しさが漂う瞬間。
     それでも。
     また次回の再会を楽しむために、明日から捻りはちまきで頑張るんですね。


どうも、お疲れ様でした!



<梶君がやってきた!編>






     1月13日。
     神戸ミュンヘンで札幌から来阪した梶君と合流した。
     1年以上のご無沙汰でも、とても元気そうである。

     「あけまして、おめでとうございます」
     「来週の朝一番に東京で会議があるんだけど、ついでに大阪まで足を延ばしたんよ」

     北海道生活も早いもので5年以上になり、その生活にいたく満足のご様子。

     「今年は暖かくて札幌にも雪がないんよ、だから雪祭りが大変なんよ」
     「で、今日はいったい誰々が来るん?」

     実は彼には、集まる人数も、誰が来るかも秘密にしておいた。
     ちょっとしたサプライズをご提供したいと思ったからである。

     それと。
     氏はエンジンがかかると長くなる。
     早朝勤務の身にはお付き合い出来ないのが実情である。
     だから、私の身代わりも兼ねてもらうことにした。
     (そんなことは話してないけど・・・)

     「まま、到着してからのお楽しみ。すみませ〜ん、生ビール2つ!」
     全員が集まるまで二人でボツボツ呑むことにした。

     「みんな元気にしてるの?」
     「嫁さんも子供もピンピンしてるよ」

     さっそくビールが運ばれてきた。
     「ささ、かんぱ〜い!!」

     そうこうすると松ちゃんがやって来た。
     男性陣勢揃い。

     「あけまして、おめでとうございます」
     「松ちゃんは何を飲む?」
     「烏龍茶にする」

     「で、今日は誰が来るの?」

     もう、話してもいいだろう。

     「甲斐女史、和田先生、そして柳さん。メールで連絡したらOKって返事が来たよ」
     「ウォ〜、何だか緊張してきたぞ」

     氏はゴクゴクッとビールを呑むピッチが早くなった。

     お代わりする間もなく甲斐女史、和田先生到着。
     「あけまして、おめでとうございま〜す」

     そして。
     柳さんの到着。
     「遅れて、ごめんなさい」
     「ささ、座って座って」

     「全員揃ったところで、かんぱ〜い!!」






     氏の湿らした喉からは次々と当時の話題や記憶が飛び出てくる。
     しかも。
     詳細でほんの数日前の出来事のような口調なのである。
     当然、本日参加していない同級生の話題も出てくる。

     「うちのクラスは何故かフォークダンスが多かったやんね」
     「ボクは小さかったから、女子が何人か休むと女子の方に回されたから男とばっかりやったわ」
     「この悲しみは忘れられんなぁ。。。」

     「女子で前列に並んでた人って誰だったの?」
     「小立さん、橋野さん、私、野武さん・・・だったと思うんだけど」
     「橋野さんて大人って感じやったよねぇ。。。」
     「先日、会ってきたよ」

     本格的に心身とも当時の等身大となってきた。
     しかもアルコールが拍車をかける。

     「いつもマイムマイムは好きな女子の数人前で終わるんよ」
     「もう一回マイムマイムしたら手をつなげるのに、曲が変わってガッカリ・・・」

     皆から笑いと共にウンウンとの相づちがある。
     すると女性陣も笑いにつられて記憶が甦ってくる。

     「マイムマイムとオクラホマミキサーともう一曲あったでしょ?あれ何だったかなぁ、、、」
     「エッ?そんな曲あったっけ?」
     「あったよ、あった!」

     「男女の人数で男子が多いクラスは悲劇だよなぁ。。。」
     「ガメなんて怒ってたよ、手をつなげないって!」
     「背の高い男子も犠牲者だったよな」

     「あんたなんてダンスで指先でしか持ってなかったやろ。ボクなんてしっかり握ってたもん!」
     「あははは、恥ずかしい時期やったんやわ」






     「そう言えば、卒業式の日にカーネーションを付けたの憶えてる?」
     「先生が何を思ったのか知らんけど、隣の人の胸に付けなさいって」
     「多感な年頃に女子の胸にカーネーションを付けるのは恥ずかしかったなぁ。。。」
     「女の子の胸に付けるねんで!モジモジしたよ」
     「今なら喜んで、何人にでもカーネーション付けるけどなぁ。。。」
     「オッチャン、オッチャン!」

     「ボクの隣は八木さんだったけど、モジモジしてたら自分で付けられてしまったんよ」
     「何だか思い出したなぁ。。。」

     「私の横って誰だったのかなぁ? ねぇ憶えてる?」
     「いや〜全然。フォークダンスが多かったというのも初耳やし」
     「そう言えば、全然存在感が無かったもん」
     「・・・でしょ」

     「私の横は原田君だったのかなぁ。。。」
     「そう云うのは野武さんが憶えてるのよ。誰々が隣通しだったよ、とか」
     「野武さんって学級委員だったかな?」
     「そうそう、1年間ずっと学級委員長やったよ」
     「ボク、いっしょにやったことあるで」






     梶君の提供する話題がリアルなので、ドンドンと中学時代に戻って行く。

     「お〜い、ビール頼もうか?」
     「私は焼酎にする」
     「おっと、本格的になってきましたな」
     「ボクは大使館ビール」
     「私はジィンジャエール。何が悲しくてミュンヘンでジンジャーなん?」

     話しは続いていく。

     「ボク元気やったから、笠屋町で休んだ子の給食はほとんど持っていったぞ」
     「カバンにパンとマーガリンを入れてたら大変な事になってオカンに怒られたわ」

     みんなの聴き入る顔には終始笑顔が漂う。

     「笠屋町も様変わりしたなぁ。。。」
     「矢野君は元気にしてるの?」
     「同窓会には出席したことないけど、必ず返事は届くよ」

     「塩畑さんて元気にしてるの?」
     「千葉でお元気にしてるそうよ」
     「今考えたら、あの子は直球勝負の大リーガータイプやったよなぁ?会ってみたいよなぁ〜」
     「八木さんは?」
     「アメリカから帰国して千葉県だったかなぁ。福島さんと近所やで」
     「福島さんて懐かしいなぁ。。。」

     「先生っていくつになったの?」
     「傘寿だったと思うけど。80歳」
     「それでも、まだまだ元気やわ」
     「今日は誘わなかったんだわ。ちょっと冬は用心した方がエエと思って・・・」
     「3月の同窓会では主賓やからね、当然」






     そろそろビールも7〜8杯目に突入してきた。
     何気なく時計を覗いてみると時間も経っている。

     話題の途切れるタイミングを見計らいたいのに。
     笑顔と談笑が止まらない。

     @修学旅行の話し。
     @当時の先生の話し。
     @クラスの違う友人の話し。
          ・
          ・
          ・

     意を決して。
     「そろそろ場所を変えましょか?」
     「エッ?もうそんな時間??」

     「ゴメン、僕はここでドロンします」
     「ちょっとだけでも顔を出したら?」
     「一般の人はまだ宵の口だけど私の時計は深夜なんよ。代わりに人質を置いときますんで」
     「人質って?」
     「私以外の4名が梶君をエスコートします!!」

     行きたい気持ちも65%あったが。
     ここで行くと、翌朝は地獄の3丁目である。
     迷いを振り切って、頭を下げる。

     「また会いましょう!」

     帰宅時の電車の中で。
     氏や女性陣の口から出てきた当時の思い出話を反芻していた。
     悲しいことに、ほとんど憶えてなかったけど。

     それでも、車窓に映る自分の顔がニヤついている。
     同じ時間を共有してたんだなぁ・・・。

     そして。
     いいもんだなぁ・・・。





本年もよろしくお願いしま〜す。